転生聖女の異世界スローライフ~奇跡の花を育てたら魔法騎士に溺愛されました~
朝食を終えたスーリアは早速花の世話の準備に取り掛かった。
家から外に出てじょうろに水を汲み、スーリア専用に貰った花畑に水を撒いていく。
案の定、十日ほど前に植えたばかりのガーベラはそろそろ花を咲かせようとしていた。可愛らしいガーベラのピンク色はスーリアの髪の色に似ている。水をあげながら、スーリアは口の端を持ち上げた。地面に生えた雑草は抜いて、育てている草花に害虫がついていないか入念にチェックしてゆく。
恵がスーリアになった時には土が剥き出しだった農園の一画が今や緑の園になり、沢山の花の蕾が付いていた。
「父さん、花の世話が終わったから手伝うわ」
一通りの花の世話を終えたスーリアは農園で作物に水やりをしているベンに声をかけた。声をかけられたことに気付いたベンは被っていた帽子のつばを少し持ち上げてスーリアをみた。
「暑いからきちんと帽子を被るんだよ、スーリア。見てごらん。お前が手伝ってくれた場所だけこんなに大きくなった」
父親は近くに生えていた茄子の低木を指さすと、白い歯を見せて子供のようににかっと笑った。
指さされた低木のあたりをみると、確かに他の場所に植えられている同じ野菜の苗よりも二まわり位育っている。スーリアは少しずり落ちていた帽子をきちんと被り直し、ベンの元に走り寄った。