転生聖女の異世界スローライフ~奇跡の花を育てたら魔法騎士に溺愛されました~
マニエルが魔術研究所に着いたとき、愛しの婚約者はマニエルを見て表情を綻ばせた。少し屈み、手を差し出すポーズをする。
「エル、おいで」
『エル』とは、ルーエンが猫姿のマニエルを呼ぶときの呼び名だ。偶然だがマニエルの『エル』でもあるので、マニエルはこの呼び名が気に入っていた。
「ニャー」
『ご機嫌よう、ルーエン様』と言ってから、マニエルはルーエンの胸に飛び込んだ。ルーエンはマニエルを抱きあげ、優しく体を撫でた。
マニエルはルーエンと過ごす、この時間が好きだった。屋敷に会いに来てくれるのも嬉しいが、この姿でルーエンの膝に乗せられたまま、仕事の様子を眺めているのもなかなかよい。それに、ルーエンは仕事の合間にマニエルをわしゃわしゃ撫で回して嬉しそうに笑うのだ。
マニエルはチラリと見上げた。真剣な表情で仕事に取り組むルーエンがいて、マニエルの胸はトクンと跳ねる。
──か、かっこいいわ!
自分の婚約者が世界一格好いいことを再確認する。
そんなこんなで、マニエルは今日もうっとりしながら、ルーエンの膝の上で過ごすのだ。
しばらくすると、ルーエンのところに来客があり、マニエルは膝から下ろされた。見上げると、エクリード第二王子殿下とアルフォーク魔法騎士団長がいた。