転生聖女の異世界スローライフ~奇跡の花を育てたら魔法騎士に溺愛されました~

 スーリアは顔を上げた。
 リアちゃんの記憶の中でも、スーリア自身が知るメリノとスティフも、二人はいつも仲むつまじく、穏やかだ。この二人が喧嘩するなど、スーリアには想像がつかない。
 怪訝な顔をするスーリアを見て、メリノはクスッと笑った。

「そりゃあ、そうよ。だって、元々は赤の他人だもの。沢山喧嘩して、すれ違って、その分もっと仲良くなるの」

 再び、沈黙が二人を包む。

「スーリア。団長さんとスーリアがこの先どうなるのかは、私にはわからない。けど、もう一度話した方がいいと思うの。きっと、スーリアが気持ちをすっきりさせて一歩進むように、背中を押してくれるわ」
「……うん、分かった」
「ねえ、スーリア。あなたは優しくて、美しくて、働き者で。私の自慢の妹よ」

 俯くスーリアを優しく見下ろし、メリノはそっとスーリアの肩を抱き寄せた。

「辛かったわね」

 囁かれたその言葉を聞いた時、止まっていたはずの涙がまたはらはらとこぼれ落ちた。


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