転生聖女の異世界スローライフ~奇跡の花を育てたら魔法騎士に溺愛されました~

「干しぶどうを五カップお願いします」
「はい、毎度あり。お嬢さんは可愛いから、まけとくよ」
「まあ、お上手ね。ありがとう」

 乾物店の主人は人当たりのよい笑みを浮かべると、紙袋に五カップと半分の干しぶどうを入れてスーリアに手渡した。スーリアはそれを片手に抱え、帰り道を急ぐ。なんだか空がどんよりと曇って来たのだ。

「リジュ、ただい……」
「帰れって言っただろ!!」

 ドアを開けた途端、鋭い怒声を浴びせられてスーリアはびっくりした。突然のことに呆然と固まっていると、ドアを開けたのがスーリアだと気付いたリジェルが慌てて駆け寄ってきた。

「リア! すまない。別の奴だと勘違いした」
「別の奴?」
「リアは知らなくていいんだよ。それより、ありがとな」

 リジェルは少しだけ強張ったような笑みをスーリアに向けた。スーリアはリジェルの様子を不思議に思ったが、接客業なのでスーリアが留守にしている間に嫌なお客様でも来たのかもしれないと思った。
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