転生聖女の異世界スローライフ~奇跡の花を育てたら魔法騎士に溺愛されました~
  
「はい、リジュ。これ買ってきたわよ。あと、これがお釣り」

 スーリアはリジェルに干しぶどうの入った紙袋とお釣りの小銭を渡した。リジェルはそれを受け取ると、

「ありがと。今から干しぶどうパン焼くから、焼き上がったら持ってけよ」と言った。
「本当? ありがとう」

 スーリアは目を輝かせた。リジェルの焼いた干しぶどうパンは大好きだ。喜ぶスーリアの様子を見たリジェルは口の端を上げると、早速、それを持って厨房へパンを焼きに行った。

「今夜は雨かしら……」

 店番をしながら、スーリアはガラス越しに見える外の空を眺めて呟いた。空の雲行きが怪しいし、風も出てきたように見える。たまたまお客様がいなかったこともあり、スーリアは店の前のバケツを片付ける事にした。

「あら? これ、売り物のお花じゃないわ?」

 スーリアは片づけようとしたバケツに、見覚えが無いものを見つけて動きを止めた。
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