転生聖女の異世界スローライフ~奇跡の花を育てたら魔法騎士に溺愛されました~
「殿下。今、何をされようとしてたのですか?」
スッと細められてこちらを見下ろす紫色の瞳が氷のように凍て付いて見えるのは、周囲がアルフォークが使った氷系魔法の氷で覆われているせいだけでは無さそうだ。これは芝居どころではなく、自分の命の危機かもしれない。
ゲボッと咳き込んだ途端に、口から流れ出たもので自身の白い衣装が深紅に染まるを目にして、エクリードは声にならない笑いを洩らした。
「止めよ」
氷点下の謁見室に、威厳のある声が響いた。
その声で、アルフォークはピタリと動きを止めて国王陛下を見上げた。静観していた国王陛下が、制止のために手を鷹揚に挙げている。
「予想以上に見応えのある余興であった。して、アルフォークよ。お主は今回の褒美に何を望む?」
「……褒美?」
アルフォークは眉をひそめた。今、自分はこの国の第二王子に剣を向けた。懲罰はあっても褒美は無いはずだ。