転生聖女の異世界スローライフ~奇跡の花を育てたら魔法騎士に溺愛されました~
「一日で四回もの魔獣の討伐を見事に成し遂げ、王宮内での魔獣の発生も死者を出すことなく鎮圧した褒美だ。領地か? 爵位か? 何を望む?」
ニンマリと口の端を持ち上げる国王陛下を見上げ、アルフォークは訳が分からずにエクリードを見た。倒れ込んで口まわりを深紅に染めたエクリードがニヤリと笑う。
「この貸しは高くつくぞ、アル。覚悟は出来てるだろうな?──ああ、くそっ! 痛むな」
エクリードはアルフォークに殴られた脇腹をさすり、低く呻く。口の端からはまた血が滴り落ちた。アルフォークに打ち負かされた魔法騎士達を治療し終えたルーエンが慌てた様子でエクリードの治癒に取り掛かる。エクリードはやっとのことで立ち上がった。
「この度の魔獣征伐、見事であった。アルで無かったら、恐らく王宮は壊滅的な被害を受けたであろう」
エクリードはタオルで口元の血を拭うと、改めてアルフォークを見た。アルフォークは訳が分からずに呆然としている。形の良い口が何かを言おうとはくはくと何回か開け閉めされ、何度目かでようやく声を発した。