転生聖女の異世界スローライフ~奇跡の花を育てたら魔法騎士に溺愛されました~

 アルフォークは口の端を持ち上げて、腕に付けた装飾具を見せるように片手をあげた。装飾具にはいくつかの小石が黒の皮ひもにぶら下げられている。前回会った時より一つ石が多いのは、スーリアと待ち合わせするときにすれ違いにならないようにとルーエンに頼んで作ってもらった探索魔法の魔法石を追加したからだ。
 アルフォークはスーリアの頭越しに、背後の商店をひょいと覗いた。

「何を見ていたんだ? 欲しいのがあれば買ってやる」
「ほんと? 私、これ欲しいな」

 スーリアは手に持っていた姿絵を差し出した。アルフォークはそれを見て、目を丸くした。

「こんなものを買わなくても、いつでも本人に会えるのに」
「うん。でも欲しいの。駄目?」
「いや、もちろん構わない」

 アルフォークはニコリと笑うと、考えるように少し沈黙した。

「俺もスーの姿絵を描かせようかな。執務室に飾る」
「あら、駄目よ」

 スーリアはすぐに首を振った。

「駄目? なぜだ?」
「だって……」

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