転生聖女の異世界スローライフ~奇跡の花を育てたら魔法騎士に溺愛されました~
 スーリアは頬を膨らませた。

「アルは只でさえ忙しいのだから、姿絵なんて置いたらそれで満足しちゃって私に会いに来てくれなくなるかもしれないわ」

 それを聞いたアルフォークは目を丸くして、堪えきれない様子でくくっと笑った。

「あり得ない。今の俺があるのはスーのおかげなんだ」
「今の私があるのもアルのおかげよ」

 アルフォークの紫の瞳が優しく細められる。
 伸びてきた右手はスーリアの頬をさらりと撫でた。スーリアはその手に自分の左手を重ねると、人差し指の腹でその甲をつつっとなぞった。くすぐったさからアルフォークがまた小さく笑いを漏らす。

 アルフォークはあの日、褒美にスーリアの保護を望んだ。
 スーリアの保護とは、物理的に囲うことではなく、スーリアの今の日常を壊さないことだ。花の力を公にすればその力を欲する多くの輩からスーリアはその身を狙われかねない。そして、スーリア自身も自分が聖女として崇められることを望まなかった。

 そのため花の力はあくまでもルーエンの術式とエクリード殿下の聖魔術の効果によるものだとされている。そして、野菜は魔術研究所で新たに開発された最新治療薬ということになっている。
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