転生聖女の異世界スローライフ~奇跡の花を育てたら魔法騎士に溺愛されました~
 下手に受け取って変な期待をさせてしまうのはよくないが、渡そうと思ってせっかく用意してくれたものを無碍(むげ)に断って相手を傷つけるのも本意ではない。
焼き菓子を焼いてきたとか、消費できるものなら団員達の詰め所に置けばいいからまだいい。問題は『アルフォーク様を想って作りました』と言うネーム入りの刺繍作品を始めとする手作りの品々だ。

 貴族令嬢の嗜みの一つには刺繍があるが、馬鹿の一つ覚えのように競って刺繍の力作を持ってこられても困るのだ。使っているところを見られればあらぬ憶測を呼ぶし、かと言って捨てるのも申し訳ない。結局、屋敷のタンスの中が新品の刺繍作品で埋め尽くされるのだ。

 アルフォークは常々思っていたのだが、こういったプレゼントは禁止にした方が良いのではないだろうか。
 とは言っても、これは多くの団員にとっては若く美しい娘と知り合う絶好の機会でもある。禁止を言い渡しても、部下たちが納得するわけも無いのだが。

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