転生聖女の異世界スローライフ~奇跡の花を育てたら魔法騎士に溺愛されました~

「ここから坂を下りてしばらく歩いたところにある、赤い屋根の『レッドハットベーカリー』です。軒先に花を常設で置いて貰う代わりに、少しの時間だけ売り子を始めました」
「レッドハットベーカリー……」

 アルフォークは何回かその名前を呟いた。知らない店名だ。もとより下町のパン屋など、貴族の次男であるアルフォークが知るよしもない。

「じゃあ、僕ら帰るから。ありがとうね」 
「はい、気をつけて」

「スーリア、またな」
「はい、また今度」

 別れの挨拶を終えると、ルーエンがアルフォークの肩に手を添えた。それと同時に、その姿がぐにゃりと歪み一瞬で姿が消えた。その場には何も無かったように、忽然と姿を消したのだ。

「まあ、すごい! 転移魔法かしら?」
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