砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎

「で、でもっ、UAEってアラビア語ですよね?
アラビア語なんて、まーったく話せませんけど……」

「あぁ、社内でアラビア語を話せる者なんていないから、通訳を雇うことになっているよ。
それに、もともとUAEはイギリス(U K)保護国(植民地)だったし、うちの仕事で関わる人たちは英語は話せるはずだからね。
……君は英語を話せたよね?」

人事部長は手元のタブレットをスクロールしながら尋ねる。あたしの個人データを確認しているのだろう。

「ええ、まぁ……でも、専門用語は勉強しなければならないとは思いますが」

もともと英語に興味があり、高校三年生のときに英検二級を取得して語学に特化した大学に進むと、学内のExchange Student(交換留学生)制度を利用しニュージーランド(N Z)のワイカト大学で一年間過ごした。


NZの英語は「Kiwi English」と呼ばれ、ヨーロッパやアメリカの人たちからは訛っててわかりづらいと言われがちだそうだが、あたしの耳には宗主国であったUK風の発音に聞こえる。

アメリカ英語のように、単語の語尾と次の単語の語頭を重ねて発音するreduction(連音)があまりないため、ネイティブスピーカーでない者にとってはむしろ聞き取りやすい方なのではないかとすら思う。

ちなみに、NZの「天敵」はなんといってもオーストラリア(Aussie)なのだが、あたしにとっては彼らの「Aussie English」が天敵である。
(「today」がどうしても「to die」に聞こえてしまう、というのはよく聞く話だ。もちろん、話す人にもよるけれども)


——UAEの人たちの英語って、どんな発音なんだろ?聞き取りやすかったら、いいんだけど……

まぁ、あたし自身はどこからどう見ても、正真正銘の日本人なのだから、ネイティブ並みの「流暢な」発音なんて向こうも期待していないと思うけどね。

それよりも、今回は確実に仕事を遂行するために、とにかく行き違いのない発音と誤解を生じない言い回しを心がける方が先決だ。

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