砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎
「ところで、近藤部長」
あたしは、ふと思いついたことを訊いてみた。
「人事異動にしては、やけに中途半端な時期ですよね?」
すると、人事部長の顔色が明らかに変わった。
「いや、えっと……それはだね……」
その目が泳いでいる。
「実は……プライバシーに関わることだから、だれとは言えないが……」
しかし、観念したのか話し始めた。
(あたしが部長相手に「圧」をかけたわけじゃないからね)
「プロジェクトメンバーに選ばれていた一人が、急に海外赴任できない状況になってね」
「えっ、病気かなんかですか?」
びっくりしたあたしは尋ねた。
「いや……病気、ではないな……」
——もしかして……
その部長の口調で、なんとなくわかった。
「いや、彼女の代わりで君を仕方なく、というわけではないからね!
ほんとに三浦さんは最終選考まで残ったうちの一人だったから!」
「……その人、『授かり婚』でもされました?」
部長の細い目が見開かれた。
——やっぱり。
「おめでたいことじゃありませんか」
——その人は口惜しかっただろうな……あくまでも想像だけど。
「私としては経緯はどうであれ、せっかくいただいたチャンスですから、前向きに捉えて活かしたいと思います」
「あ、そう……よかった……」
とたんに部長はホッとした顔になった。
——でも、ガチで選ばれたわけでなく実は「代打」だった、ってことについては、やっぱり複雑な心境でもあるのよ?