砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎

英語では些細なニュアンスで行き違いが生じるといけないため、大橋さんは日本語で話していた。

ラジュリーのすぐ脇で控えるムフィードさんが、即座にアラビア語で通訳する。
たぶんその方が彼にとっては素早く訳せるのであろう。

すると、聞き終えたラジュリーが口を開くのだが、彼はあたしと大橋さんが直接判わかる英語だ。


「We got married in the desert without having to notify the authorities. Therefore, we’re officially husband and wife.」
〈役所に届けを出さずとも、砂漠で結婚式を挙げた。よって、我々は正式な夫婦だ〉

「部族に結婚を認められること、我々には一番大事です」

ムフィードさんが「補足」する。


「……パールちゃん、結婚式、挙げたの?」

大橋さんが目を見開く。

「お、大橋さん……黙って軽はずみなことをして……すいません」

あたしは深々と頭を下げた。

「そもそも、君たちには恋愛感情なんてまったくなく、お互いの利害関係のみで『結婚』したっていう話じゃなかったの?」

図星だ。耳が痛くて、顔を上げられない。


「それなのに……」

大橋さんは怪訝な表情で、リビングテーブルを挟んで目の前にいるあたしとラジュリーを見た。

「なんで、今、二人が並んで座ってるわけ?」

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