砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎
「この会社で僕にそんなふうに言うのは、パールちゃんくらいだよ」
彼はそう言って肩を竦めた。
あたしは、ふふふ…と笑う。
今でこそ、こんなふうに言い合えるようになったが、彼がコーチャーのときは本当に厳しくてキツかった。
と言っても、声高に叱られたことは一度もない。
やらかしてしまったときは、いつも「どうしてこのようなミスを犯してしまったのか」「今後どうすれば再発せずに業務を遂行できるか」を、徹底して追求させられた。
『僕が言えば、数分もかからずに済むけどね。
それでは、三浦さんのためにならないんだよ。
たとえ時間がかかっても、答えは自分自身の力で出さないとまた同じような過ちを繰り返すよ』
というのが、彼の「教え」だった。
だから、あたしが自分なりの答えを出すまで、ひたすら根気強く待ってくれた。
——そう言えば、あのときはまだ『三浦さん』呼びだったなぁ……
すでに職場の人たちからはニックネームで呼ばれていたのに。
そして、研修期間という「修行」の身から晴れて「卒業」したとき、彼は王子さまのようなノーブルな微笑みとともに右手を差し出して……
『これで君はこの部署の正式な仲間だよ。
……パールちゃん』
初めてそう呼んでくれて、わたしたちはがっちりと握手を交わしたのだった。
——こんな人を……
好きにならないわけ、ないじゃん……