砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎
الفصل ١⏳
「……えっ、人事部長から呼び出し、ですか?」
いつものように定時出社し、タブレットでスケジュールアプリを開いて、この日ご希望される物件の内覧にご案内するお客様の確認を自席で行っていたときだった。
「そうなんだよ。今、僕に部長から社内メールで連絡があってね」
あたしが所属するマンション事業販売部の田代課長が腕を組んで訝しげな顔をする。
四十代半ばの上司の目下のお悩みは、一人娘ちゃんが中学生になって反抗期モードに突入し、なかなか口を聞いてくれなくなったことだと聞いている。
「いったい、何の用だろうね?」
ゆるキャラのタヌキみたいな風貌で 、惚けた顔して訊いてくる。
——いやいやいや、こっちが聞きたいんですけれども。
そういうところですよ、娘ちゃんがイラッとするの。
決して、悪い人ではないんだけどなぁ……
人当たりも良く、お客様のお話を親身になって聞いて決してガツガツと売り込んだりしないから、成約物件数はいつも上位の人なんだけど……
まぁ、今は売り手市場で特に都内の物件数自体が不足しているし、それでなくてもうちは大手の不動産会社だから景気に左右されることは少なく、おかげさまで少々余裕かましてても割とコンスタントに売れていくんだけどもね。
もちろん、あたしはいつでもベストを尽くすけどっ!
「とにかく、行ってきます」
お客様との約束の時間もあるし、担当の新築物件のマンションギャラリーにも寄らなきゃいけない。
なんだかわからない厄介な話は、とっとと終わらせるに越したことはない。
あたしは、すくっと席から立ち上がった。