砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎
「Excuse me,Ms.Miura?」
ふと目を上げると、すらりと背の高い男の人があたしのいるテーブルの脇に立っていた。
イスラム教徒らしく、その顔の下半分はしっかりとヒゲで覆われてはいたが、なかなかのイケメンだ。
(イスラム教の指針「ハディース」では、ムスリム男性にとって「ヒゲ」は「大人の男」である証なのだそうだ)
このカフェでは今、東アジア系の女性はあたししかいない。
だから、彼の方は間違えようがなかった。
「Yes,l’m Mamiko Miura. You’re Mr. Mufiid,right?」
〈そうです。ムフィードさんですよね〉
あたしは立ち上がった。
「It’s very nice to meet you,Mr.Mufiid.」
〈お会いできてうれしいです、ムフィードさん〉
そう言って右手を差し出すと、彼も右手を差し出した。
「Ms.Miura,it’s very nice to meet you too.」
〈三浦さん、こちらこそお会いできてうれしいです〉
あたしたちは握手した。
「Can you call me Mufiid? You don’t have to call me Mr. Mufiid.……あ、ムフィードと呼んでくれませんか?『Mr.』はつけないでいいです。
わたし、今、日本語勉強中です」
「えっ、そうなんですね」
それは、ありがたい。やっぱりネイティブスピーカーではないから「変換」するのが面倒だ。
「わたし日本語の練習します。だから、日本語お願いします」
——この人、これを機会にアラビア語と英語以外にも日本語を身につけようとしているんだ。
語学が格段に上達する人って、こんなふうに自分のレベル関係なく、トライ&エラーで貪欲に「話す」人なんだよなぁ……
「わかりました、ムフィードさん。
……では、あたしのことも『マミコ』でお願いしますね」