砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎
そして、あたしはムフィードさんの車でオフィスへ向かうことになった。
彼の運転する車は、アメリカ・テ◯ラ社のモデルXだ。
実は、これから向かう脱炭素都市を目指すマスダール・シティは、ガソリン車はもちろんハイブリッド車ですら一切禁止のため、電気自動車でしか乗り入れできないのだ。
とは言え、シティ内に敷かれた軌道上を「個人用高速輸送機関」が「市民の足」として無人運転で走行してくれているから問題はない。
(「高速」と言っても時速四十キロメートルほどらしいが)
一台につき定員二名のPRTは、タッチパネルに行き先を入力すると、そこまで自動運転で連れて行ってくれるのだそうだ。
昼間だったら、女性の一人歩きでも大丈夫みたいだから、じゅうぶん「あたしの足」にもなってくれるだろう。
「……ところで、ムフィードさん」
あたしは気になっていたことを早速尋ねてみた。
「イスラム教徒の男性は、まだまだかなり封建的ですよね?」
「『ホーケンテキ」?」
——あ、彼にとっては難解な単語だったか……
「えーっと、女の人が家から出て外で働くのはイヤじゃないんですか?」