砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎

「彼はEnglandのUniversity of Cambridge(ケンブリッジ大学)卒業しました」

ムフィードさんが説明する。

「えっ、まさか……」

林所長が絶句した。


——ということは……

うちの社ではわざわざ英語を「封印」してアラビア語で話していた、ってこと?

そりゃまぁ、ビジネスの上での言語による行き違いによって、もしかしたら桁違いの損害に見舞われるかもしれないから「母国語」で、というのはわからないわけでもないけれども……


——先刻(さっき)の彼の口調は、確かにぞんざいだったけど……発音はものすごーく綺麗だったな。

あぁ、そうだ!元英国首相のトニー・ブレアの発音に似てるんだ。
彼は……オックスフォード大学出身だったじゃなかったっけ?

——あっ、いわゆる「オックスブリッジ」の発音か!


英国最古の名門大学として双璧をなす、オックスフォード大学とケンブリッジ大学(オックスブリッジ)で学んだ男子学生が話す独特の発音だ。
(彼らは前段階の名門パブリックスクール時代からすでに身につけているであろうが。)

外国人が聞いてもわかりやすく、そこはかとなくインテリジェンスを感じさせる。
(中身はものすごーく痛烈な嫌味が込められていることが多いそうだけれども……)

現在の首相であるボリス・ジョンソン(オックスフォード大卒)もそんな発音だが、ただブレアと比べるとあまりにも色濃く出過ぎていて却って野暮ったく聞こえてしまうけどね。

ほかにも映画「ブリジット・ジョーンズの日記」「ノッティングヒルの恋人」の俳優ヒュー・グラント(オックスフォード大卒)の発音もそうだ。

やんちゃな彼はわざとワルぶった話し方をしているのだが、ちょっとした端々に育ちの良い綺麗な発音が滲み出てしまっている。


——あっ、そういえば……

マーリク氏はヒュー・グラントの言い回しに似てる、似てるっ!


以前、DVDの特典だったかなんかで、ヒュー・グラントが「ブリジット・ジョーンズの日記」で共演しているオスカー俳優コリン・ファースと監督(脚本家だったかな?)の男三人で、その映画の本編を振り返りながら「このときは実はこうだった、ああだった」と言いたい放題言っているのを観たことがあるのだが。

中でも一番毒舌を吐きまくっていたのがヒューだったのだけれども、その様子に酷似していた。


「Excuse me,Mr. Malik…」

林所長が彼に英語で話しかけた。

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