砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎
アーチ状に施された乳白色の天井は、ここはホールかと思わず見上げてしまうほど高い。
正面の壁面には、目にも鮮やかなウルトラマリンブルーを基調に、職人が技の限りを尽くしたと思われる黄金の糸で幾何学模様が刺繍された見事なタペストリーが二枚、左右対称に掛けられている。
正真正銘の大理石が余す所なく敷き詰められた広大な床の中央に、しっとりとした艶のある黒皮張りのソファが置かれている。
そこに、いかにも気怠げに長い脚を組んだマーリク氏が座っていた。
ムフィードさんに促されて、対面の一人掛けのソファに腰を下ろしつつ、目の前のマーリク氏の顔色を伺う。
——ちょっと……
ミスター・マーリクは、まだ御機嫌斜めの状態じゃんよ……
とは言え、どんな用件で呼び出されたのか皆目わからないが、とにかく謝罪するしかない。
「Mr. Malik,it’s very nice to see you.
I deeply regret that I was really rude to you a few days ago.」
〈ミスター・マーリク、またお目にかかれて光栄です。先日はたいへん失礼をし、深くお詫び申し上げます〉
「لؤلؤ」
マーリク氏が胡乱な目つきであたしを見て言う。
『ルールゥ』と聞こえた。
アラビア語で「真珠」の意味だ。
「Well…what can I do for you?」
〈な…なんでしょうか?〉
緊張で、思わずごくりと喉が鳴る。