砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎
「That's not much. I feel sorry for her.」
〈それはあんまりですよ。彼女が気の毒です〉
ムフィードさんが、あたしにもマーリク氏にも理解できる英語で口添えしてくれる。
——そうよ、そうよ!そのとおりよっ‼︎
我が大橋不動産が、この地域での社運を掛けた大型プロジェクトって言ってもいいくらいなんだからっ!
そんなのが取引中止になっちゃったら、東京に戻されるところか、会社にすらいられなくなるじゃん‼︎
「Mr.Malik, if you’d like to get married to her,you should present her “Mahr” properly.」
〈ミスター・マーリク、もし彼女との結婚を望むのであれば、きちんと「マフル」を提示した方がいいです〉
——「マフル」って、なに?
「Exactly.」
〈確かにな〉
——だから、なに?
「マミコさん、『マフル』は結婚のとき、夫が妻に払うお金です」
怪訝な顔をするあたしに、ムフィードさんが日本語で教えてくれる。
——へっ?いきなりお金の話?
どんな事情かはわからないままだけど、一応あたし、今「プロポーズ」されてるんだよね?
仕事の話をされてるんじゃないよね?