砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎
「Oi! I'm struggling to understand. You lot must speak in English!」
〈おい!なにを言ってるのかわからん。おまえたち英語で話せ!〉
——あ、懐かしい。
アメリカ英語では「Hey!」と声を掛けるところを、イギリス英語では「Oi!」と言うのだ。
私が学生時代に留学していたニュージーランドでも使われる言葉だ。たぶん、オーストラリアでも使っているんじゃないのかな?
まったくの偶然だと思うが、なんと発音も意味も日本語の「おい!」とほぼ同じである。
(ちなみに「you lot」は、イギリスの下町言葉で「おまえたち・おまえら」という意味である。
オックスブリッジ出身のマーリク氏には無縁の言葉のはずだが、たぶんわざとワルぶって遣っているのだろうなぁ…)
そんなことはさておき……
ムフィードさんが、またもやあわててマーリク氏に通訳していた。
そう言えば、マーリク氏はあたしたち大橋不動産の人間には、ムフィードさんを介してアラビア語でしか話さなかった。
——いくら仕事上での行き違いを防ぐためとはいえ、こんなに流暢に英語を話せるくせにね。
この国の男性は……っていうか、たぶんマーリク氏限定なんだろうけど……
『自分がされて嫌なことは、絶対に他人にしてはいけません』
と、幼稚園や小学校の先生に教わらなかったのだろうか?