砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎
でも、だからと言って……
「えっと……ミスター・マーリクの『事情』は、なんとなくわかりましたけれども……」
まだ、腑に落ちないことがある。
「だったら、さっさとお父様のお選びになった方を奥様にお迎えになればいいじゃないですか?」
「What’s she saying?」
〈何て言ってるんだ?〉
すぐさまムフィードさんが、あたしの言ったことをマーリク氏に通訳する。
「Huh? I don't wanna follow my dad’s ways. Why do I have to marry his mistress?」
〈はぁ? 親父の言いなりになんか、なりたかねえよ。なんであいつの愛人と結婚しなきゃいけねえんだよ?〉
マーリク氏は、思春期の男子か?というようなぞんざいな口調になった。
しかし、その口調はすぐに戻った。
「Actually, one of them is one of my brother's wives now. The only good thing about this situation is that at least she’s younger than him.」
〈実際に、そのうちの一人が今や私の弟の妻たちのうちの一人だ。唯一の利点は、その女が弟よりも若いということくらいだな〉
ええっ、それって……
父親が結婚したくてもできなかった若い愛人を息子に押し付けた、ってこと⁉︎
「It is what it is because Muslim men can only marry four women.」
〈仕方ないさ、ムスリムの男はたった四人の女としか結婚できないのだから〉
そう言って、マーリク氏は超絶イケメンな顔を退廃的な表情に歪ませた。
あたしの目の前に、どーんと分厚い国境の壁が突貫工事で復元された。
いや、別にこの国の所為ではなくて、彼ら金持ち一族限定の「御家騒動」だとは思うんだけれども……
——やっぱり理解らないわっ!さっぱり理解できないわっ‼︎