砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎
いきなりの「展開」に、あたしはマーリク氏から差し伸べられた手を取ることもなく、ただ呆然とその場で立ちつくすしかなかった。
そんなあたしに痺れを切らしたのか、マーリク氏が長い脚を活かした大きな歩幅でやってきた。
そして、あたしの腰に手を回すと、いきなり自分の方へ引き寄せた。
ともすれば、あたしは彼に抱き寄せられたみたいに見えるだろう。
と同時に、彼の(絶対にめちゃくちゃ高価だと思われる)上質な肌触りのスーツから、イランイランのようなスパイシーな中にもがっつり甘さも含まれた、エキゾチックな香りが漂ってきた。
なんだか、くらくらする……
「…My Lulu,are you all right?」
〈…私のルールゥ、大丈夫か?〉
あたしの耳元に、たとえどんな防音機能の付いた鉄壁のオンナゴコロであろうと、わんわんと響いてゆさゆさと揺さぶられるに違いない低音が降ってきた。
——だーかーらーぁ、『my Lulu』ってだれっ⁉︎
思いがけないことの連続にあたふたしていたら、なんと彼があたしの旋毛に、チュッ、と軽くキスをするではないか!
——ええええぇ………っ⁉︎
二十七歳にもなって、年甲斐もなく真っ赤っかになってしまった。
そうなると、なんだか無性に口惜しくなってきて、思わず顔を上げた。
すると、マーリク氏の艶めいた黒曜石の瞳と目が合う。
そのとき、彼が片方の口角を上げ、艶かしくニヤリ、と笑った。
パリコレ級イケメンの艶冶な笑顔が、どアップであたしの目の前にある。
——ま、ま、まーったく『all right』じゃないんですけれども……っ!