砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎
「原因」は、縦長のダイニングテーブルの対面に座ったマーリク氏の「仏頂面」のせいである。
(彼は仏教徒ではなく、イスラム教徒だけれども……)
——こんなに美味しそうなフレンチなのに……
超絶イケメンとは言え、そんな表情を見ながら食べなければならないのだ。
AmuseもEntreeもPotageもPoissonもまるで食べた気がしなかった。
特に、中東では高級魚と言われるクエの一種・ハムールをポワレして、無花果のソースをかけたお料理なんて、絶対にこれ美味しいヤツ。
(思いがけないことに、アブダビはペルシア湾に接しているため、魚が豊富だ。
また、乾燥した中東の気候に適している無花果は、古くからこの地で栽培されているそうだ)
——やっぱり……美味しいものは気の置けない人と食べないとダメだわ……
それに、この広いダイニングルームの端で静かに待っているムフィードさんも気になる。
しかも、彼は立ったままである。
ダイニングテーブルでフレンチをいただくのは、マーリク氏とあたしのみ。
もちろんあたしは、ムフィードさんを立たせたまま食べるなんてできないと言ったけれど、彼は首を左右に振った。
『マミコさん……いいえ、奥様。気にしないでください』
——いやいやいや、気になりますって。