砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎
「……あたしもアラビア語、勉強した方がいいのかなぁ」
「No, you don't have to learn Arabic.」
〈いや、君はアラビア語を覚えることはしなくていい〉
今までムフィードさんと話をしていたはずのマーリク氏が、いつの間にかあたしにその目を向けていた。
あたしがぼそり、とつぶやいた日本語をムフィードさんがすぐに訳して彼に伝えたのだろう。
だが、先ほどまでのたとえどんな防音機能の付いた鉄壁のオンナゴコロであろうと、わんわんと響いてゆさゆさと揺さぶられるに違いない甘い低音ではなく、ジャミーラさんに向けられていたのと同じ絶対零度の冷たく尖った声だった。
どうやらとろける笑顔といっしょに、甘い声もまたラララ星のはるか彼方へ旅立って行ったようだ。
そして、マーリク氏はうんざりした顔と声で告げた。
「It's inconvenient for me when I can't understand what you're telling. I don't have a choice. I’ll learn Japanese, your native language.」
〈君が話すことを私が理解できないのはなにかと不便だ。仕方がない。私が、君の母国語である日本語を覚えよう〉