幸せを運ぶ尻尾
ドクン、と抱き締められている棗の心臓が嫌な音を立てる。その言葉をまだキャロルーーー棗が飼っていたコーギーが生きていた頃、聞いたことがあった。

ペットロスとは、大切にしていた犬などが死んでしまった悲しみが重症化してしまい、心の病や身体的な病気を患ってしまうことを言う。

「棗は、犬の話をするといつも悲しそうな顔、苛立っている顔をして逃げていきます。でも、犬のキーホルダーをかばんにつけているから犬のことは好き。でも悲しんでいるから、もしかしたらと……」

棗は何も考えられず、ただ悲しくて泣いていた。友達でさえ気付いていなかったのに、カルラだけは見抜いてくれていたのだ。

キャロルは歳を重ねるうちに病気がちになってしまった。そして、ついに他の施しようがないと獣医に言われ、家族で話し合った結果、これ以上キャロルを苦しませたくないと安楽死を選択したのだ。

「でもッ……あの選択が正しかったのか、わかんないの!お父さんたちはみんなもう笑ってて、キャロルのこと話しても泣かなくて……。私だけ、ずっとずっと悲しいの!どれだけ泣いても、苦しくて辛いの!あの時、キャロルを私たちの勝手な判断で死なせちゃったのかなって……ずっと思ってて……」
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