幸せを運ぶ尻尾
「キャロルのこと、いっぱい聞かせてください」

優しく微笑み、カルラが言う。棗は涙を拭いながら迷った。また口を開けば泣いてしまいそうな気がしていたからだ。

「思いっきり悲しんで、たくさん泣いて、初めて悲しみを乗り越えられます。たくさん泣いてください。私とローがいます!だからKeine Bange!」

それに、犬は犬が好きな人にしか懐きません。こんなにローはあなたに尻尾を振ってますよ?

そう言われ、棗が横を見ればローが尻尾を振って棗に撫でてと言わんばかりに鼻を体にくっつけてくる。棗は恐る恐るローに手を近づけ、自分の匂いを嗅いでもらう。そしてゆっくりと顎の下を撫でる。キャロルが死んでから、初めて犬に触れた。

「……あったかい。可愛い」

ローは尻尾を振り、もっと撫でてと催促する。棗は涙を溢しながらそれに応えていく。それをカルラは微笑んで見守っていた。

犬の揺れる尻尾は幸せを運んでくれるのかもしれない。そう棗は思った。何故なら今、棗は幸せを感じているからだ。
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