パパか恋人かどっちなのはっきりさせて!
7.お花見足首捻挫事件―おんぶしてもらった!
6時を過ぎると暗くなってきた。春になったとはいえ、夜は冷えるから少し厚着をして出かけることにした。
マンションを出て大通りを公園の方に歩いて行くことにした。パパは「電車で行ってもいいけど、ここからは歩ける距離だし、時間もそんなに変わらない。どうする?」と聞いてきた。私は歩きたいと答えた。
マンションを出るとすぐに私はパパと腕を組んだ。そのために買ってもらった高いヒールの白い靴を履いてきた。これを履くと背が高くなって腕が組みやすいと思ったからだ。
パパが私の方を見るけど、もう知らんぷりで当然のことのように腕を組んでいる。パパも悪い気はしなかったようでそのままにしている。いい感じで二人は歩いて行った。
12~3分で公園に着いた。思っていたよりも人が多い。ゴーというような音がする。人ごみの音だ。
桜が満開で照明に映えてとても綺麗だった。人が多いからもう腕を組んで歩けない。それでも手を繋いで桜を見上げながら公園を一回りする。
「すごい人だね」
「東京はどこへ行っても人が多いですね」
「でもそれが当たり前になると、だんだん人ごみに慣れてくる。人が多いと何故か安心感があるから不思議だ。皆と同じことをしているという安心感かもしれないね」
「私も慣れてくるかしら」
「自然と慣れてくる。そのうち都会の生活が良くなってくるから」
「私も都会の絵の具にすっかり染まってしまうのかしら」
「良しにつけ悪しきにつけ、染まらないと生きていけない。でも大丈夫だから、僕が久恵ちゃんを守ってあげるから」
「パパは結婚しないの? 誰か良い人いないの?」
「いない。この歳になったから、もう考えないことにした。マンションを買ったのも一人での老後に備えるためだったから」
「そうなんだ」
なにげなく、聞くことができた。前からそうは思っていたけど、パパにはいわゆる彼女はいないことが確認できた。よかった! これで私の努力次第でどうにでもなる。それにパパは私のことが気になっているのは間違いない。
そんなことを考えていたら、石に躓いて転んだ。足首が痛い。パパが驚いて手を差し伸べてくれる。手につかまって起き上がろうとするけど足首が痛くて起き上がれない。
「大丈夫か?」
「足首が」
「捻ったかな、捻挫したかもしれない。いつもよりヒールが高かったからね」
何とか起き上がらせてもらったけど、足首が痛くて歩けない。パパが困っている。するとパパが私の前に背中を向けてかがみこんだ。
私はパパが何をしようとしているのかすぐに分かった。さすがパパ、私の保護者、いや守護神。しっかりと背中に抱きついて首に腕をまわす。パパの背中は大きくて温かい。
パパは私の太ももをおそるおそる手で抱えてゆっくりと立ち上がった。周りの人が一斉に何事かと私たちを見ている。恥ずかしいので顔を背中にくっつけた。パパがゆっくり歩き出した。そんなに重くは感じていないみたいで安心した。
しばらく歩くと私も周りを伺うゆとりができてきた。パパが私をおんぶして歩いているので、行く先の人は何だろうと道を空けてくれる。だから割りとスムースに歩けている。大事におぶられているというこの何とも言えない安心感に浸っている。
ようやく大通りが見えるところまできた。ここまでくると道も混んでいない。もっとおぶられていたい。
「もうすぐ大通りだ。大丈夫か? すぐにタクシーを拾うから」
「大丈夫です」
「歩いてみる?」
「このままおんぶして行って下さい」
「分かった」
ようやく大通りに着いた。私を下ろしてタクシーが通りかかるのを待っている。私はパパに摑まって立っている。
ようやくタクシーが捕まった。私を先に乗せてパパが乗り込んでくる。そして段差の少ないマンションの裏口までの道順を説明している。
着くまでの間、私は黙ってはパパに寄り掛かっていた。パパはずっと私の肩を抱いていてくれた。
ようやくマンションの裏口に到着した。パパが先に降りて私が降りるのに手を貸してくれた。タクシーが戻って行った。何とか、たどり着いた。
私は無理すれば歩けたけど歩かなかった。立ったまま待っていた。私はパパがどのくらい私のことを心配してくれるか試そうとしていた。パパがしょうがないなあというような顔をして背を向けてかがみ込んだ。しめしめとしっかり抱きついた。
エレベーターに乗ってようやく部屋までたどり着いた。結局ソファーまでおんぶしてくれて座らせてくれた。
「大丈夫か?」
「捻挫したみたいです」
「今日は土曜日でこの時間だから、このままここで手当てして様子を見よう」
「手当てしてください」
「まず、氷で冷やそう。それから湿布する。今日はお風呂はやめておいた方がいい。下手に入ると悪化するから」
「そうします」
パパはすぐに氷を持って来て濡れタオルで包んで足首に巻いて冷やしてくれた。それから自分の部屋に戻って湿布薬を持ってきてくれた。足首が冷えたところで、湿布薬を張って、その上からまた氷で冷やしてくれた。なかなか手際がいい。
それから私のためにいつものようにコーヒーを入れてくれた。至れり尽くせりだ。
「これで一応の処置をしたから様子を見よう」
「ありがとうございました。私の不注意でした。はしゃいでしまってご免なさい」
「いや、今日は渋谷に出かけたり、夜桜見物に歩いて行ったりして、それに新しい靴だったから、疲れて足に負担がかかったからだと思う。僕の配慮が足りなかった」
「おんぶしてもらって嬉しかったです」
「いや、いいんだ、こちらこそ」
こちらこそ? あとは私が気にすると思って言わなかったが、私の太ももを抱えていたことや背中にお乳が当たっていたことがよかったみたい。おんぶしてもらったので、それくらいのことがないと申し訳ない。
私のお乳は大きくはないが小さくもない。ほどほどの大きさはあると自負している。形も悪くないと思っている。おんぶしてもらった時、胸を離そうとはしないで、それができるだけパパに分かるように背中に押し付けていた。パパは相当気になったと思う。ちょっとやりすぎたかなと思うけど、これくらいの刺激がパパには丁度良い。
◆ ◆ ◆
日曜日はやっぱり朝から雨だった。やはり昨晩、夜桜見物に行っておいてよかった。朝、目が覚めて、起き上がって足の具合を確かめていると、パパがドアをノックした。
「今日一日、僕が食事を作ってあげるから安静にしていて」
「すみませんがお願いします」と答えた。足の具合は悪くはなかった。痛みもほとんどなく歩いても気にならないくらいに回復していた。パパの応急手当てがよかったからだ。でもお言葉に甘えてそうさせてもらうことにした。
今回の捻挫では、図らずもパパの私への気持ちを試すことになった。でも私のために一生懸命におんぶも手当てもそれに食事の用意もしてくれた。大切に思われている。それがとっても嬉しかった。
マンションを出て大通りを公園の方に歩いて行くことにした。パパは「電車で行ってもいいけど、ここからは歩ける距離だし、時間もそんなに変わらない。どうする?」と聞いてきた。私は歩きたいと答えた。
マンションを出るとすぐに私はパパと腕を組んだ。そのために買ってもらった高いヒールの白い靴を履いてきた。これを履くと背が高くなって腕が組みやすいと思ったからだ。
パパが私の方を見るけど、もう知らんぷりで当然のことのように腕を組んでいる。パパも悪い気はしなかったようでそのままにしている。いい感じで二人は歩いて行った。
12~3分で公園に着いた。思っていたよりも人が多い。ゴーというような音がする。人ごみの音だ。
桜が満開で照明に映えてとても綺麗だった。人が多いからもう腕を組んで歩けない。それでも手を繋いで桜を見上げながら公園を一回りする。
「すごい人だね」
「東京はどこへ行っても人が多いですね」
「でもそれが当たり前になると、だんだん人ごみに慣れてくる。人が多いと何故か安心感があるから不思議だ。皆と同じことをしているという安心感かもしれないね」
「私も慣れてくるかしら」
「自然と慣れてくる。そのうち都会の生活が良くなってくるから」
「私も都会の絵の具にすっかり染まってしまうのかしら」
「良しにつけ悪しきにつけ、染まらないと生きていけない。でも大丈夫だから、僕が久恵ちゃんを守ってあげるから」
「パパは結婚しないの? 誰か良い人いないの?」
「いない。この歳になったから、もう考えないことにした。マンションを買ったのも一人での老後に備えるためだったから」
「そうなんだ」
なにげなく、聞くことができた。前からそうは思っていたけど、パパにはいわゆる彼女はいないことが確認できた。よかった! これで私の努力次第でどうにでもなる。それにパパは私のことが気になっているのは間違いない。
そんなことを考えていたら、石に躓いて転んだ。足首が痛い。パパが驚いて手を差し伸べてくれる。手につかまって起き上がろうとするけど足首が痛くて起き上がれない。
「大丈夫か?」
「足首が」
「捻ったかな、捻挫したかもしれない。いつもよりヒールが高かったからね」
何とか起き上がらせてもらったけど、足首が痛くて歩けない。パパが困っている。するとパパが私の前に背中を向けてかがみこんだ。
私はパパが何をしようとしているのかすぐに分かった。さすがパパ、私の保護者、いや守護神。しっかりと背中に抱きついて首に腕をまわす。パパの背中は大きくて温かい。
パパは私の太ももをおそるおそる手で抱えてゆっくりと立ち上がった。周りの人が一斉に何事かと私たちを見ている。恥ずかしいので顔を背中にくっつけた。パパがゆっくり歩き出した。そんなに重くは感じていないみたいで安心した。
しばらく歩くと私も周りを伺うゆとりができてきた。パパが私をおんぶして歩いているので、行く先の人は何だろうと道を空けてくれる。だから割りとスムースに歩けている。大事におぶられているというこの何とも言えない安心感に浸っている。
ようやく大通りが見えるところまできた。ここまでくると道も混んでいない。もっとおぶられていたい。
「もうすぐ大通りだ。大丈夫か? すぐにタクシーを拾うから」
「大丈夫です」
「歩いてみる?」
「このままおんぶして行って下さい」
「分かった」
ようやく大通りに着いた。私を下ろしてタクシーが通りかかるのを待っている。私はパパに摑まって立っている。
ようやくタクシーが捕まった。私を先に乗せてパパが乗り込んでくる。そして段差の少ないマンションの裏口までの道順を説明している。
着くまでの間、私は黙ってはパパに寄り掛かっていた。パパはずっと私の肩を抱いていてくれた。
ようやくマンションの裏口に到着した。パパが先に降りて私が降りるのに手を貸してくれた。タクシーが戻って行った。何とか、たどり着いた。
私は無理すれば歩けたけど歩かなかった。立ったまま待っていた。私はパパがどのくらい私のことを心配してくれるか試そうとしていた。パパがしょうがないなあというような顔をして背を向けてかがみ込んだ。しめしめとしっかり抱きついた。
エレベーターに乗ってようやく部屋までたどり着いた。結局ソファーまでおんぶしてくれて座らせてくれた。
「大丈夫か?」
「捻挫したみたいです」
「今日は土曜日でこの時間だから、このままここで手当てして様子を見よう」
「手当てしてください」
「まず、氷で冷やそう。それから湿布する。今日はお風呂はやめておいた方がいい。下手に入ると悪化するから」
「そうします」
パパはすぐに氷を持って来て濡れタオルで包んで足首に巻いて冷やしてくれた。それから自分の部屋に戻って湿布薬を持ってきてくれた。足首が冷えたところで、湿布薬を張って、その上からまた氷で冷やしてくれた。なかなか手際がいい。
それから私のためにいつものようにコーヒーを入れてくれた。至れり尽くせりだ。
「これで一応の処置をしたから様子を見よう」
「ありがとうございました。私の不注意でした。はしゃいでしまってご免なさい」
「いや、今日は渋谷に出かけたり、夜桜見物に歩いて行ったりして、それに新しい靴だったから、疲れて足に負担がかかったからだと思う。僕の配慮が足りなかった」
「おんぶしてもらって嬉しかったです」
「いや、いいんだ、こちらこそ」
こちらこそ? あとは私が気にすると思って言わなかったが、私の太ももを抱えていたことや背中にお乳が当たっていたことがよかったみたい。おんぶしてもらったので、それくらいのことがないと申し訳ない。
私のお乳は大きくはないが小さくもない。ほどほどの大きさはあると自負している。形も悪くないと思っている。おんぶしてもらった時、胸を離そうとはしないで、それができるだけパパに分かるように背中に押し付けていた。パパは相当気になったと思う。ちょっとやりすぎたかなと思うけど、これくらいの刺激がパパには丁度良い。
◆ ◆ ◆
日曜日はやっぱり朝から雨だった。やはり昨晩、夜桜見物に行っておいてよかった。朝、目が覚めて、起き上がって足の具合を確かめていると、パパがドアをノックした。
「今日一日、僕が食事を作ってあげるから安静にしていて」
「すみませんがお願いします」と答えた。足の具合は悪くはなかった。痛みもほとんどなく歩いても気にならないくらいに回復していた。パパの応急手当てがよかったからだ。でもお言葉に甘えてそうさせてもらうことにした。
今回の捻挫では、図らずもパパの私への気持ちを試すことになった。でも私のために一生懸命におんぶも手当てもそれに食事の用意もしてくれた。大切に思われている。それがとっても嬉しかった。