青い夏の、わすれもの。
中盤までどのパートも生き生きと演奏をしていた。

まるで草原をかける白馬のように颯爽と音楽は駆け抜けた。

そして、中盤の終わりから終盤の前半にかけての木管楽器主体の落ち着いたメロディの裏のロングトーンもぶれることなく、クリアに響かせた。

後はもうラストへと加速させて最後の盛り上がりの部分を突破するだけ。

これなら行ける。

県大会も夢じゃない。

わたしだけでなく、きっと誰もがそう思っていた。

信じていた。


しかし......


神様はそんなに優しくはなかった。

ううん、優しいか否かという問題ではない。

神様は残酷な結末を用意していた。


それは本当に最後の最後の部分だった。


――パンパーン、パッパ~~......パンっ!


空を突き抜け宇宙の果てまでも貫く光線のような音が......途切れた。

その瞬間、会場中から熱が奪われ、一瞬で凍りついた。

目の前に広がるのは拍手の海だと思っていた。

誰もがそう信じていた。

ほんの数秒前まで。

なのに、

なんで?

どうして?

どうして今目の前にあるのは、海底のような暗く孤独な世界なの?

生気を感じない拍手の音がわたしの心を逆撫でした。

刺々しく鳴る鼓動と足音にイライラが止まらなかった。

それでもわたしは歩くしかなかった。

ここから早く去りたかった。

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