青い夏の、わすれもの。
「あのさ、山本」

「ん?」


泣きすぎてなんだか鼻声になっていた。


「オレ、ミスったのが山本じゃなくて良かったって思ってる」

「え?なんで?」


わたしが首を傾げると、さつまくんはいたずらっ子のように笑った。


「さっき以上にビービー泣いて、死ぬまでずっとミス引きずりそうだから」

「いやいや、死ぬまでとかそんな引きずらないから!さつまくんがわたしのことどう思ってるのか分からないけど、わたしそんなにメンタル弱くないから」

「そ」

「何それ?気に入らない」

「別に気に入ってもらわなくても構わない」

「その言い方、ますます気に入らないっ!」

「オレも山本のその顔気に入らない」

「む~~っ」

「なんだよ、その顔。はははっ」

「笑わないで」


なんて言いながらもわたしは笑ってしまった。

お腹を抱えて笑い出してしまい、全然搬入口付近から動けなかった。

笑ったら胸のもやもやが本当に全部全部無くなって空に還っていった。

結局わたしとさつまくんはバスの出発時間の1分前に滑り込み、先生の隣の席に乗ることになってしまった。

しかも、お小言を聞く羽目に。

それでもなんだか楽しかったのは、隣にさつまくんがいたからだと思う。

わたしの胸に向日葵がぱーっと咲いたような気がした。

わたしの夏が、始まった。
< 106 / 370 >

この作品をシェア

pagetop