青い夏の、わすれもの。
「風くんのこと、なんだけど...」

「うん」

「わたし、風くんのことは諦めようと思う」

「えっ...」


――カタン...。


あまりの衝撃にあたしはアイライナーを落としてしまった。


「さ、爽。大丈夫?ごめんね。急に変なこと言っちゃって。でも、本気なの」


澪はあたしのアイライナーを拾い、あたしの目の前に差し出した。

その手は小刻みに震えていた。

あたしはそれを見て、いても立ってもいられなくなり、澪を両腕で思い切り抱き締めた。

腕がビリビリと痛くなるのも構わずにあたしは熱を伝え続けた。

あたしも澪と同じ気持ちを共有しなきゃと思った。

それがあたしの役目だと思った。

だって、澪にこの決断をさせてしまったのは、あたしのせいだと確信していたから。


「爽に抱き締めてもらう資格、わたしにはないよ」

「なに言ってるの?あたしと澪は親友じゃない。お互いが辛い時に1番に力になるために親友がいるんだよ。なのに、そんなこと言わないでよ」


澪は首をぶんぶんと振った。


「わたし、爽の親友失格だ。爽の気持ちに今まで気づけなかったから...。爽のこといっぱいいっぱい傷つけた...」

「さっきから何言ってるの?」


あたしが澪の頬に手を伸ばす。

澪の瞳から滝のように涙が溢れては頬を伝っていた。

澪は声を震わせながら言った。


「爽...魁くんのこと...好き、だよね?」

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