青い夏の、わすれもの。
澪の、光線のように真っ直ぐな視線があたしの瞳のど真ん中を射った。

バレないように頑張っていたつもりでも、

やっぱバレてしまったか。

しかもこのタイミングで...。

でも、どうして澪は気づいたのだろう?

それに、どうして急に風くんを諦めるなんて言い始めたんだろう?


あたしの脳裏に浮かんできたのは...あの顔だった。


「もしかして...大楽からなんか聞いた?」

「ううん。違う。わたしからさつまくんに色々相談したの。話聞いてもらってるうちに自分の心が見えてきて、自分の周りで起こってることも見えるようになったの」

「そっ、か...」


あたしは澪の頭を撫でた。

今日はいつものポニーテールじゃない。

暑いのに髪を下ろして毛先を巻いていた。

澪がおしゃれすると、何十、何百倍も可愛く美しくもなる。

それを誉めてくれた人はいただろうか?

不器用でも背伸びして、憧れの自分像に向かい手を伸ばすあたしたちを見てくれている人はいるのだろうか?

恋するあたしたちに救いはあるのだろうか?


親友の好きな人に告白されてしまった、

親友に自分の好きな人が告白してしまった。

こんな残酷でドラマチックな恋を誰が望んだのだろうか。


自分の好きな人が自分を好きになって、好きだと言ってくれる。

こんな単純で世の中にありふれた事象が、なぜあたしたちには降り注がれないのだろうか。


ただ辛くて苦しい事実だけが、黒い雨のように胸にたまっていく。

瞳の裏が熱くなり、また涙腺がぷるぷると震える。

今日はもう泣けるほどの涙は残っていないと思ったのに、あたしの目から雫がぽたぽたとこぼれ落ちた。


< 147 / 370 >

この作品をシェア

pagetop