青い夏の、わすれもの。
「爽...爽の気持ちに気づけなくて、相談なんかしちゃって、本当にごめん。ごめんね、爽...」

「謝んないでよ。澪、なんも悪くないじゃん。ってか、誰も悪くなんてないんだよ。悪いのは...こんなシナリオを書いちゃう神様だけだよ...」


あたしは澪を抱く腕に力を込めた。

澪はあたし以上に泣き虫だ。

他人のことを自分のことのように感じ取って心労を増やすような繊細な子だ。

そんな澪にはちょっとガサツでちょっと繊細なあたしが必要だと、そう思いたい。


「あたしはね、澪のことも魁のことも大好きだよ。どっちも失いたくないんだよ。

だから...だからさ、澪、あたしの側にいて。

親友失格だなんて言わないで。1人で決めつけないで。

あたしは...あたしはね、澪だから親友になりたいって思ったんだよ。
どんなことにも真っ直ぐでピュアで、けどちょっと不器用な澪が良いって思ったから友達になったんだよ。

あたしが選んで友達になったんだから、澪は自分のこと責めなくていい。
仕方ないことなんだから。

恋はさ、理屈も正解もない学問なんだから。

あたしが魁を好きで、魁が澪を好きでも、あたしは...あたしは澪の親友でいたいよ」

「爽...っ!」


澪はあたしの胸に額を押し当てて泣いた。

泣いて、泣いて、泣いて、声が枯れるまで泣いた。

幸いにもトイレを利用する人は現れなくて澪は思う存分泣くことが出来た。

けど、あたしが用意したシナリオは最悪の結末を迎えてしまった。

それを修正する手だてはあるのだろうか。

あたしはライトアップされた色とりどりのクラゲの水槽を見つめながら模索していた。

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