青い夏の、わすれもの。
短冊を笹にくくりつけていると、朝吹くんがやって来て短冊をじっと見つめた。


「さすが深月さん。スケールが違う。世界の幸せを願えるなんてなかなか出来ることじゃないよ。

億万長者になれますようにとか、宝くじが当たりますようにとか、そういう利己的な願い事をする人が多いのに、深月さんはそうじゃない。

他人に目を向けられる深月さんはすごいと思う。
おれはそんな深月さんを尊敬するよ」


なんて、朝吹くんは誉めてくれたけど、私の願い事なんて到底叶わないこと。

世界が優しさと愛に満たされることなんて、少なくとも私が生きているうちに起こり得ないと思う。

優しさも愛も数値化出来ないから、恐らく自己満足で終わる。

そんな非現実的な願い事をして、現実的な自分に迫っていることから目を反らそうとしているだけなんだ。

私は弱虫だ。

本当は願いたいことは目の前にちゃんとあるくせに、叶わなかったらどうしようなんて思って願うことさえしないんだもの。

いつまで私はこうして生きていくのだろう。

いつまで自分に嘘ついて歩み続けるんだろう。

その先に私の望むものはないとわかっていながら、なぜ私はこの道から反れないのだろう。


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