青い夏の、わすれもの。
「今日は随分ご機嫌みたいだね」

「そりゃあもちろん。テスト終わったから解放感に浸ってたの」

「今回も成績良かったみたいだね」

「お陰様で。でも、朝吹くんも良かったよね?総合3位だし、数学と理科なんて1位。本当にすごいと思う」


私が誉めると朝吹くんは頭に手を置いた。

どうやらこれが朝吹くんの照れ隠しらしい。

最近ようやく気付いた。


「誉めてくれてありがとう。
でも、やっぱり深月さんの方がすごい。

総合2位で全教科5番以内なんて、ほんと、努力の賜物だと思う。

おれなんて、国語と英語は100番くらいだし。全部そつなくこなせる深月さんがうらやましいよ」


なんて、上機嫌なところにさらに誉め言葉のシャワーが注がれるから、私は恵みの雨を受けた向日葵のように生き生きとした。

ますます胸がポカポカし、頬も自然と綻ぶ。

ニコニコというよりはニヤニヤに近い笑みを浮かべると、朝吹くんが言った。


「良かった。笑ってくれて」

「ふふっ。そうだね」


きっと、私がこんなに笑えるのもどん底の時に話を聞いてくれて私のために願ってくれた朝吹くんのお陰だ。

感謝してもしきれない。

私は何度も何度も心の中でありがとうを呟いた。

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