青い夏の、わすれもの。
――ブーブーブーブー...。


どこからかスマホのアラームの音が聞こえた。

私は見なくても分かった。

この音の発信源は、すぐそこにあった。


「時間だ...」


律くんがスマホをタップし、騒がしいその音を止めた。

私の鼓動も一瞬止まった。

呼吸が出来なかった。

苦しくて苦しくて苦しくて...

瞳の奥からじわじわと生ぬるい液体が競り上がって来そうだった。

私は歯を食い縛って、瞳の熱と鼻の奥のツーンとした痛みに耐えていた。


「深月さん、ありがとう。じゃ、ペア交代に行こう」

「...ペンギンはね!」


私はまだ繋ぎ留めたくて声を張り上げた。

律くんの足がピタリと止まった。


「カウンターシェイディングっていうカモフラージュ効果のためにモノクロなの。

お腹が白ければ、海中で下から見上げた時に日光の光が射し込む水面に溶け込んで空の一部に見えるの。
逆に黒だと空の上から見たときに海の藍色に溶け込むの。
捕食防止のためにペンギンは色を変えたの!」


私が息を切らして話し終えるのとほぼ同時に律くんは振り返った。

そして、ぎこちない笑みを溢した。


「そうなんだ...。ほんと、深月さんは物知りだね。せっかく知識があるんだから、オレ以外の人にも教えてあげて。きっと皆喜んで聞いてくれる」


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