青い夏の、わすれもの。
ミーティングが終わり、3年生は強制的に帰らされることになった。

本当は引退試合までは普通に練習したいのだろうけれど、監督が許してくれない。


敗けを潔く認めて後輩に全てを譲渡しろ。


そう、この前...あの日、言ってた。

魁が澪にコクった、あの日、ね...。


「おい、爽。何で着いてくんだよ?お前、生徒会室にそれ、出しに行くんだろ?」

「あ」


あたしの手には引退試合の日程や内容をまとめた企画書があった。

そう言えばこれから生徒会室に行かなきゃならなかったんだった。

すっかり忘れてた。


「爽今日ほんとどうかしてるよな?熱でもあんのか?」


そう言うと魁はあたしの額に手を置いた。


「ひぇっ」

「は?何その反応。いつもはヘラヘラ笑ってるくせに」


あたしは魁の手を払った。

他の女が好きなくせに、なぜこんなに易々と手を出せる?

あたしが幼なじみだから?

いじりやすいから?

意識してないからこんなことが出来るんだよね?

今までヘラヘラしてたとしても今は状況がまるで違う。

全然違うんだよ。

平常心でいられないんだよ。

だって...

だって、さ

魁があたしの側から離れてく気がするから。

部活も引退で本当にただの幼なじみに戻っちゃって、どんどん遠くなっちゃう予感しかないから。

それなのにあたしは...

まだ、言えない。

ってか、もう一生言えないかも。

だって、魁の心には...

あたしはいないから。

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