青い夏の、わすれもの。
シュンとしているあたしの横で、何も知らない魁は呑気にこんなことを言う。


「熱はないみたいだし、爽のバカは今に始まったことじゃないから大丈夫だな。ははははっ!」

「あっそ」


あたしは突っぱねた。

魁に何を言っても届かない。

なんか、そう思ってしまった。


ひとまず仕事を片付けて来よう。


あたしは魁に背を向けた。


「じゃ、あたしこれ置いてくるわ。お疲れ様。また明日ね。バイバ~イ」

「んだよ、急に...。またな!」


魁の声が鮮明に聞こえたけど、あたしは振り返らず、手も振り返さなかった。


魁のバカ...。

バッカやろう...!

ちょっとはさ...

ちょっとは、あたしの心配しろよ。

幼なじみとしての心配でもいい。


"いつもと様子が違うから心配になった"

"爽、何かあったらいつでも相談しろよ"


ま、相談なんて出来るわけないけど、

でも、それでもね...

そういう優しい言葉が欲しかったんだよ。

無条件に降る雨のように、

この胸に降り注いで欲しかったの!

なんで分かんないかな?

...バカはどっちよ。


あたしは、唇が切れて血が滲んできそうなくらい強く噛み締めた。

ウォーキングを張り切ってやってるおばちゃんみたいに腕をぶんぶん振って大股で歩いた。

その先にあるのが、生徒会室だと忘れて...。

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