青い夏の、わすれもの。
わたしたちはしばらく磯の香りを鼻腔で感じながら潮風に吹かれ、穏やかに波打つ海を見つめていた。

そして、ある時ふと話さなきゃという気持ちが胸の底から沸き上がってきて、ボンッという爆発音が聞こえた。

それを合図にわたしは口を切った。


「さつまくん、さっきはごめんなさい。あんなところで突然泣き出して迷惑をかけました。ほんと...ごめん」

「謝るな。山本は何も悪いことしてない。感情のままに体が反応しただけ。むしろ良いことだとオレは思う」


さつまくんの意外な発言にわたしは目を出目金のように丸くした。


「山本はさ、自分の感情を出さないところがある。それは特に人間関係に対して。

今日だって、まず永瀬さんに怒りをぶつけたって良かったんだ。

なんでこんなめちゃくちゃなメンバーを呼んだんだって。話と違うだろって」

「でもそれは爽が色々考えて手はずを整えてくれたことだから、わたしは責められないって思った。

それよりも...わたしは自分自身に対して苛立った。
それと、罪悪感とか劣等感とかもう...色んなことがごちゃ混ぜになって爆発した。

胸の中にある風船が割れる音が聞こえた。

わたし、自分で自分の首を絞めちゃったみたい」


わたしはオレンジジュースに手を伸ばし、一口含んだ。

甘酸っぱいこの感じが初恋を想起させ、また心がジンと痛くなった。

そんなわたしを見かねてさつまくんは代わりに喋り出した。


< 216 / 370 >

この作品をシェア

pagetop