青い夏の、わすれもの。
「どうして?」


疑問が言の葉になり、潮風に乗ってさらわれた。

その質問に答えてくれる人は1人しかいない。


「理由なんて単純なものだろう。
足元に咲く1輪の花よりも、遠くに見える山に咲き誇る桜が美しく見えるのと同じ。
結局は灯台元暗しってことだ。当たり前にあるものほど、その大切さに気付きにくい。ただそれだけ。

だから、好きになった理由を考えるよりも目の前に迫った選択をする方が余程大事だと思う。

今までの話を全部引っくるめて山本はどうしたい?

全てが上手くいく世界なんてないんだから、山本が思うように行動すればいい。

たとえ失敗しても、その責任はオレが取る。山本に助言したのは紛れもなくオレだから」


わたしはさつまくんに話を聞いてもらい、助言してもらって、ようやく自分のすべきこと、したいことが明瞭になった。

そして、それを実行する勇気も少しずつだけど湧いてきた。

足踏みしていても始まらない。

今度こそ、わたしは...

決断する。


潮風がびゅーっと吹いて慌てて帽子を押さえた。

太陽は雲1つない青空の真ん中でご機嫌に笑っている。

そこに一筋の線が流れる。

まるで黒板にチョークで線を引くように、真っ直ぐに見えて曲がっている線が出来る。

きっと、真っ直ぐじゃなくてもいいんだ。

多少曲がっても誰も咎めたりしない。

むしろそれが...

わたしらしい。

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