青い夏の、わすれもの。
顔を上げ、わたしはさつまくんの瞳を見つめながら言った。


「わたし、決めた。わたしの想いのままに伝える。傷つけても傷ついてもちゃんと伝えたい。だって...わたしにとって、出会うべくして出会った大切な人たちだから」

「そ。りょーかい」


さつまくんは今までのことが嘘だったかのようにあっさりとした返答をした。

わたしはそんなさつまくんに心からお礼を言った。


「ありがとう、さつまくん。さつまくんのお陰でやっと見えた。やっと踏み出す勇気が出た。本当に...本当にありがと」

「お礼はハーゲンダッツで」


...うわ。

何気に要求してきた。

でも、今目の前にあるオレンジジュースもわたしの決断も、さつまくんがくれたものだ。

さつまくん無しではわたしは何も決断出来なかった。

むしろハーゲンダッツでは安すぎるくらい。

その程度のお礼で済むことに感謝しなきゃ。


「なんてのは冗談だ。それより早く捜しにいかないと。もう時間だろ?」


わたしは腕時計をさっと確認した。

確かに時計の針は半周していた。


「ヤバイ。早く見つけなきゃ」


わたしは勢い良く立ち上がった。

と、その時――。


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