青い夏の、わすれもの。
化粧室に到着するや否や爽劇場が開演した。

美容専門学校に進学を決めた爽に対する両親の意見の不一致が原因で2人がケンカしたのを思い出して悲しくなったから泣いたと爽は大胆な嘘をついた。

爽の気持ちを知ってしまってから聞くと、すごく心苦しくなった。

嘘をついてまでわたしに魁くんへの気持ちを隠し通そうとした爽の信念が鏡に鮮明に映っていた。

爽はわたしに嘘だと見抜かれているなんて気付く素振りも見せず、目元を飾り始めた。


「で、澪は?話って何?」


必死に軌道修正を図ろうとしている爽の隣に立ち、鏡から目を反らして話し出した。


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