青い夏の、わすれもの。
まだ痛い。

まだ重い。

まるでものもらいにかかった時のよう。

パンパンに腫れてしまい、狭まった視界にはカラフルなクラゲが優雅に泳いでいた。


「ねぇ、澪」

「ん?」

「風くんのことはどうして諦めようってなったの?」


クラゲをぼんやりと眺めていると爽が聞いてきた。

言葉を口にしたらその通りになる。

それを信じたくなくてずっとわたしは迷ってるふりをしてきた。

でも、そんなふりはもう止めよう。

次に進むためにも、自分に嘘をつくのはもうお仕舞い。

わたしはどんな色にも染まるクラゲを見つめながら、唇を動かした。


「わたし...風くんのこと知ろうとしてこなかったんだ。

怖くて踏み込めいって言い訳してるうちにここまで来ちゃって、ライバルが現れてしまった。

そして、その子といる時の風くんを見てわたしはお似合いだなって思っただけで、そこを越える努力をしなかった。

そうこうしてるうちに2人の距離は縮まって、さっきもね2人でいなくなっちゃったの。

深月さんを追って風くんが走っていくのを見届けることしか出来なかった。

けど、それを見ていて思ったの。

深月さんを見ている時の風くんが1番キラキラしてるって。

風くんの心からの気持ちが走り出してるって、そう思った。

だから...決めたの。諦めるって」

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