青い夏の、わすれもの。
わたしは爽の透明感のある瞳を見つめた。

わたしの視線と爽の視線が一点で交わる。

わたしの覚悟、爽にちゃんと聞いてもらいたい。

わたしは空気を目一杯吸い込んで言葉にした。


「魁くんにも返事をする。わたしの気持ち、ちゃんと伝える。だから、爽...」


わたしは爽の左手に自分の右手を重ねた。


「わたしが出来なかったことを爽がしてあげて。魁くんのこと、必ず幸せにしてあげて。それが出来るのは...やっぱり爽しかいないと思うから」


爽は青空よりも爽やかで太陽よりも眩しく、向日葵よりも鮮やかな笑みを溢した。


「おっけ。任せとけ」


それを見てわたしも笑った。

わたしたち、今日ここから出発だ。

改めて自分の気持ちと向き合って、

ようやく泳ぎ出せる。

大海原を泳いでいく中で

大きな岩にぶつかったり、

大波に拐われたり、

サメと遭遇したりするかもしれない。

それでも、

それでも、ね。

1人じゃないから、

ゴールは違っていても

泳いでいく過程に爽がいるから、

迷わずに泳いでいける。


爽...絶対辿り着こうね。

まだゴールは見えないけど、

わたしたちなら必ず辿り着ける。

そう、信じてる。


「澪、約束しよ」

「うん」


爽が人差し指を立てる。

わたしも人差し指を立て、爽の指に絡めた。

爽はまたニカッと笑った。


「必ずあたしたちは...」

『幸せになる』


わたしたちは幻想的な世界の中で固い指切りを交わしたのだった。


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