青い夏の、わすれもの。
例のごとく、あたしは魁の家に催促に出向いた。

ドアの向こうから出てきたのは、藍色の浴衣姿の魁だった。


「よっ、爽!浴衣、なかなか似合ってんじゃん。孫にも衣装って、昔の人は良く言ったもんだな」

「うっさい。最後のは余計だから!」

「へいへい。すいやせん」


あたしはまたもや怒鳴ってしまったが、実を言うとかなり動揺していた。

だって、魁が想像以上にカッコ良かったから。

去年までは部活のメンバーとジャージ姿で行っていたから、浴衣姿は小学6年生以来のことだ。

最後に見た浴衣姿からは想像も出来ないくらい背は伸びて肩幅も広くがっしりとした。

ずいぶん立派に成長したものだとあたしは妙に感心してしまった。


「爽、さっきから人のことじっと見てさぁ、一体どうしたんだよ?あ、もしかしてカッコ良すぎて見とれてたとか?」


まさにその通りなのだが、あたしはぷいっとそっぽを向いた。


「んなわけないでしょ、バカ。自惚れんのも大概にしなさいよ」

「自惚れてなんかねーし。それより早く行かねーと。澪の演奏に間に合わなくなる」

「あ、確かに」


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