青い夏の、わすれもの。
......あ。

言ってしまった後に気が付いた。

今、らしくないこと言った。

完全にミスった。

こんなとこで弱み見せてる場合じゃないのに。

魁の前じゃ泣かないってそう決めてたのに。

これからあたし...大事なこと言わなきゃならないのに。


あたしが内心焦っている横で、魁はぼそっと呟いた。


「ごめん。俺が悪かった。勝手にいなくなったのがいけなかった。ほんと、ごめん」

「いや、別にそんな謝んなくても...」

「俺、澪の隣に大楽が座ってるの見てさ、なんつうかこう...ムシャクシャってか、ムカムカってか、とにかく嫉妬して。で、気付いたら会場出てコンビニ寄ってコーラ買ってた。一気飲みした」


はぁ...。

なんだこのくだらんエピソードは。

超絶、くだらん。

嫉妬して放浪してコーラ?

もう...笑っちゃうよ。


「ははは!ばっかじゃないの?何意味不明なことしてんのよ!」


なんて言いながら、鼻の奥がつんとなるのに気付いた。

笑ってるのに、

笑ってるはずなのに、

なぜか涙が込み上げてくる。

これって一体どういう気持ち?

なんなの、これ?


「爽、どうした?」

「どうもこうもしてない」

「いや、だって爽、泣いて...」

「泣いてるよ。なんか、泣けて来ちゃったんだよ」

「そんな怖かったのか?なら、なおさらごめん」


あたしは魁のその言葉にぶんぶんと首を大きく左右に振った。

魁が「じゃあ、何...」と言いかけたところで、あたしの気持ちが前のめりに駆け出した。


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