青い夏の、わすれもの。
私が到着した時には既に朝吹くんは来ていた。

私は慣れない下駄をカタカタ鳴らしながら駆け足で朝吹くんに近寄った。


「朝吹くん、ごめん。お待たせしました」

「あっ、深月さん!なんかいつもと全然雰囲気違うね。でも、浴衣すごく似合ってる。かんざしも大人っぽくていいよ」

「そうかな?ありがとう」

「いえいえ...」


誉めても誉められても戸惑ってしまう。

このぎこちない感じがどことなく甘酸っぱい。

祖母の家に行くと必ず飲ませてもらえる梅ジュースをふと思い出した。


「じゃ、行こっか」


朝吹くんが勇気を出してホイッスルを鳴らしてくれた。


「うん」


私は青いボールを蹴り、駆け出した。

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