青い夏の、わすれもの。
私達は時間を追うごとに増す人流に逆らいながら、金魚すくいのお店にやって来た。

深月家の毎年恒例行事の1つが金魚すくい対決だ。

3人の中で1番多く掬えた人のお願い事を聞くというルールを母が制定したのは、私がまだ4歳の時。

それからは毎年そのルールに則って金魚を掬ってきた。

私は毎年両親に負けるからどちらかの言うことを聞いていた。

大抵は屋台の何かを買ってくるというパシりの仕事。

今年はその重圧がないから、金魚をすくうことだけに集中出来る。

私は浴衣の裾をたくしあげ、気合い十分で金魚と対峙した。

今年こそは取ってやる。

私は勢い良くプールにポイを入れ、大好きな出目金を追った。

出目金とポイが平行になったら、

引き上げる!


「おりゃっ!」


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