青い夏の、わすれもの。
「あ!獲れた...っ!」


私が左手に持っていたボウルを見ると、ずっと狙っていた出目金が窮屈そうに泳いでいた。


「深月さんやったね!」

「朝吹くんのお陰だよ。的確なアドバイスありがとうございました」


私がペコリと頭を下げると、朝吹くんが私の頭に手を乗せ、微笑んだ。


「良くできました」


その笑顔は今まで私の瞳に映っていたものとは異質のものだった。

爽やかさを残しながらもどことなく甘さがあった。

例えるとそう...チョコミントのような感じ。

朝吹くんを見て私はチョコミントアイスを思い出し、じわじわと唾液が出てきた。

チョコミント好きとしては、たまらなかった。


「どうかした?」

「ううん。何でもない」


なんて言ったけど、何でもないわけはなかった。

"好き"だと言われたその日から私の心はアイスクリームのようにゆっくりと、けど確かに溶けてきていた。

心の表面を覆っていた分厚い氷にアイスピックの先で突かれたようにヒビが入ったんだ。

回りくどい言い方を取っ払って表すと...変わった、の一言。

私は朝吹くんと過ごすうちに変わったのだ。

それはきっと...

良い変化。

無条件にそう思った。
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